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原発再稼働を粉砕する 最前線・上関 1

 

原発再稼働を粉砕する

 

        最前線・上関 1

長周新聞記者座談会 

 

投機主義と決別し産業復興を

 

  安倍政府が原発再稼働、輸出に舵を切ったなかで、新規立地の突破口として上関原発計画を巡っても推進手続きを前に進める動きがあらわれ、祝島の漁業補償金の配分をゴリ押しする策動が顕在化している。三〇年来の上関原発反対斗争の歴史的な総括もしながら、運動の展望はどこにあるのか、記者座談会をもって論議した。

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 祝島では震災前の2008年あたりから、漁業補償金の受け取り問題が顕在化してきた。漁業補償交渉は2000年に祝島を除く関係七漁協(上関、室津、四代、平生、田布施、牛島、光)でつくる一〇七共同漁業権管理委員会の多数決で妥結して、中電はその当時半額のみ支払うという、全国でも前例がないやり方でカネを配っていた。残りの半額は知事の埋立同意以後という約束だった。「管理委員会の多数決で決まったのだ」といっていたものの、祝島が交渉のテーブルにすらつかず、漁業権放棄に同意しない。実際には未解決だから半額を先送りして、周辺漁協を通じて圧力を加えるものだった。

 

 2008年に最高裁が漁業権裁判について「祝島は管理委員会の契約に拘束される」という曖昧な判決を出したのを受けて、二井知事が埋立許可を出した。おかげで中電は残りの半額も支払うことになった。しかし、「原発準備工事開始」といってゼネコンが町内に乗り込み、建設事務所を作ったり、大がかりなパフォーマンスをやったが、肝心の海に手をつけられない。祝島が漁業権放棄に同意していないからだ。それで、「原発はもうできるのだから諦めて、補償金を受け取れ」といって、受け取り=漁業権放棄同意というイようとしてきた。これに対して祝島の婦人たちが中心になって、受け取り拒否を貫いてきた。

 

 「補償金を受け取ってはならない」というのは三〇年間の苦労や思いが詰まっているし、なにより福島の教訓をムダにしてはならないという思いが強い。漁業補償交渉すらしていないのに、中電が一方的に振り込んできた補償金を配分してから、漁業権放棄の三分の二同意や書面同意を取り付けていくような手法は聞いたことがない。全て後付けで手続きを誤魔化そうとしている。全国でも例がない強権的な漁業権剥奪の手法だ。

 

 

 上関原発計画については三〇年来一貫して祝島の漁業権問題が焦点だった。地元の漁業権、ないしは共同漁業権に関係する漁協のなかでは七対一で、祝島だけが反対している構図は三〇年前から変わっていない。最高裁判決をもって、「祝島の漁業権はなくなった」「反対しても意味はないから諦めろ」と大騒ぎしたが、祝島の漁業権放棄が決定できるのは最高裁でもなければ、一〇七共同漁業権管理委員会でもない。祝島の漁業者自身だ。この漁業権を剥奪しなければ田ノ浦地先に手を付けることができないし、原発建設のメドが立たない。だからなんとしても国や県政、電力会社は祝島を崩そうとしている。

 

 祝島を崩すために県政や中電がどれほどのことをやってきたか。94年の漁業権書き換えも県水産部が仕掛けてやったものだ。漁協合併も県水産部が直接祝島に乗り込んで、漁協経営の粗探しをしてゴリ押しした。その後に県漁協が乗り込んで、「補償金を受け取れ」としつこいのも、漁協合併が導線になっている。背後にいるのが県当局で、彼らが司令部になってやらせている。県漁協は信漁連の借金帳消しで補助金をもらっている関係だけ見ても県当局のいいなりだ。

 

 郷土を廃虚にする原発

 

 福島事故も起きているなかで、全てを捉え直さなければならない。祝島では補償金受け取り問題がせめぎあいになっているが、今になってカネが欲しいといって反対派を裏切っていく者についても、その性質について考えなければならない。祝島の全島民、周辺の数十㌔圏内の住民を福島のような難民・棄民にしても自分たちだけがカネをもらいたいというなら、それはひどい話だ。従来の推進派も「そんなつもりで推進してきたのではない」と転換しなければいけない。自宅や財産を捨てて難民になって、それこそ避難している間に1000人以上も難民疲れで死ななければならないような状況はたまったものではない。

 

 「地元承認」といっても従来のまま進められるわけがない。少なくとも100㌔圏内の了解なしにはムリだ。福島の経験からしても、これまで「地元」扱いされていた30㌔圏内はみんなが難民になってしまう。17万人もの住民が追い出されたのだから少々ではない取材に行った際、山を越えても線量計が鳴り続けて、双葉町や大熊町など立地町に近づけば近づくほど、静まりかえった町や村しかなかった。まさにゴーストタウンで、上関で同じ事態が起きればどうなるか考えるだけでゾッとする。

 

 福島事故では100㌔以上離れている所でも被害を被って、東電社員が頭を下げて回っている。上関につくるなら、山口県内もだが、風向きによっては大分県、愛媛県に至るまで棄民になりかねない。上関が承認するかしないかで進められるものではない。それにしても、福島であれほどの状況を作り出しておいて再稼働を進めるのだから、国なり電力会社というのは残酷だ。第二次大戦とも似ている。いくら国民が飢えて死んでも止めないし、どれだけ犠牲が出ようが知ったことかという姿とそっくりだ。国策の残酷な正体をあらわしている。

 

(続く)

 

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